話題の両A面シングル ついに配信スタート!いまやガールズ・ロック・カルチャーを引っ張っていく重要なキーパーソンになった木村カエラ。そんな彼女の新作は、本人出演CMで強力オンエアされている「マスタッシュ」と、映画『パコと魔法の絵本』の主題歌「memories(original version)」の両A面シングル。カエラの二面性を象徴するこの2曲について話を聞いた。
――今作はツアー中に作っていたそうですね。
「マスタッシュ」のほうは、ラヴ・ソング的な感じがめずらしい!
木村カエラ:うん。でもね、恋愛の歌詞を書こうと思って書いてたわけではないんだよね。気付いたらそうなってて。ホール・ツアーを回りながら、いろんなことを考えていたの。今まではライヴハウスでのライヴが中心だったじゃない? ライヴハウスのときは自由に楽しんでくれたらいいなっていうのが私の中にあったの。でもホールだと、変に薄い壁がある感じがしてて。しかも、幅広い人が観に来てくれる。いつものテンションだと絶対にダメっていうことがわかってたから、どうホールでライヴハウスっぽく、ホールっぽく、ポップに見せられるか、それをツアーの間、一回一回考えていたの。
――それが歌詞に影響した?
木村:そう。ライヴ中は興奮状態だし、すごくいっぱい音楽が鳴っているし、いろんな人が「カエラちゃ~ん! 」って呼んでくれる。そういうライヴが終わって、ホテルに戻って自分のことを考えたりするときに、誰の声も聞こえない、音も鳴ってない、静かな状態で、今日はどうだったか考えたりしていると、何かしら答えが見つかるんだよね。そこから、“静かな中に答えがある”っていうのをテーマにして歌詞を書こうと思ったの。そこからどんどんイメージが膨らんでいった。実は、この歌詞は渋谷のスクランブル交差点もテーマなんだけど、昼間、交差点にはたくさん人がいるでしょ? その中には、悩める女の子もいたりして。そういう子は、夜になると渋谷のクラブに行ったりして遊んでる。自分が何を求めているかとか、そういう世の中で何を見つけていったらいいのかわからないという悩みの中で、急に静けさをパンと与えられる瞬間もあったりするわけ。その状態が、私の中で恋愛と似ているなって思ったのね。
――それはどういうこと?
木村:例えば、クラブの中にいて、ワァ~って踊ってるんだけど、好きな人がそこにいるだけで……。
――時間が止まる!
木村:そう!音は鳴ってるけど、膜が張ったような感じになって、サイレントな状態になる。周りがスローモーションになる。その人が誰と話してるのか、何をしているのか、何を話そうか……。一本通った“好き”って気持ちには嘘がないじゃない? 静けさの中に答えがあるっていうのは、それなのね。<I ガッチャ feeling>って歌詞が出てくるけど、それはそういうことなの。嘘のない気持ちを見つけた。「やった! 」って意味。それを恋愛に例えて。恋って、そんなクラブのうるさい中でも自分で空間を作り出せるじゃない? そこで答えを見付けられる、自分の気持ちに気付かされる感覚が、自分の考えていたことにいちばん近いかなと思っていて。
――“恋”に例えるとわかりやすいもんね。
木村:うん。“特集・渋谷の若者”みたいなテレビ番組で「何していいかわかんないし」とか言ってるじゃない? でもいっぱい考えてたりするんだよね。ムカついたり、うれしかったり、楽しかったりする時点で、いろんな気持ちが自分にあるわけじゃない?だからすごく悩んでいることがあっても、絶対に答えは自分の気持ちとか、発してる言葉にあるような気がしていて。そんなことをテーマに書いてたらこういう歌詞になったの。何かのために生きるとか、何かのために自分の感情を使うって、何ひとつとして無駄なことはない。つらいことも楽しいことも大切なこと。それを伝えたかった。
――サウンド的にはライヴ映えするね。
木村:ねっ!『+1』って作品を作って、その中にも「Jasper」が入ってるけど、木村カエラができる範囲はどこまでだろうって感覚で打ち込みを使ってみたりした部分もあったの。元々私の中にあったのは、生演奏ですべてできるものってことだったのね。『+1』を経て、先に進むんだけど、いろいろやってみて、もしまた戻るならサウンドはどうなるんだろう? って。そこに“+1”を足したらどんな形になるかなって考えたら、こうなったのね。ちょっとエレクトロな感じもあるんだけど、全部生音でやってるっていうのが、私の理想型。今回はそういうのにもこだわっていこうっていうのはあったかな。
――もう1曲のタイトル曲でもある「memories(original version)」もカエラにしか出せない世界だね。中島哲也監督の映画『パコと魔法の絵本』の主題歌。
木村:中島監督の映画の曲をやりますってなったときに、曲がすでに出来上がってたの。だから、今回は木村カエラの楽曲というよりは、映画に乗っかった。で、歌詞と歌は私が担当します! みたいな。映画に出ている役者さんと近い感覚。曲もイメージするものが映画の製作サイドにはあったしね。あとは監督とどんなものにしたいか話したときに「子供も歌えるもの」って話だったの。中島監督のこの映画も絵本っぽくて、子供が観たら楽しいし、大人が見たら考えさせられるしっていうのがあったから、じゃあ得意分野だと(笑)。出来上がった映画を観に行って、そこで自分が引っかかったところ、感動したところ、気になったところ、気になった台詞を全部メモってたの。だから映画のまんまの歌なんだよね。映画の中での物語で大切にしているものを歌詞にしたのね。すごくいい映画なの。だから私が主題歌を担当することができてうれしい。映画を観たら、この歌詞はより伝わると思うから、映画を観て聴いてほしいってホントに思う。
――今回のシングルは全然違う2曲じゃない? でもカエラならアリって思うのが面白いな。
木村:不思議だよね(笑)。あぁ、そうですかってなる感じがある。ビックリはするけど、「あぁ! 」って。
――ライヴを見ててもそうだからね。パートによって世界観が変わるけど、全部カエラ・ワールドっていう。
木村:無理矢理全部まとめるから(笑)。またすぐツアーが始まるよ。今度はライヴハウス・ツアー。今回のホール・ツアーはライヴハウスでやったらどうなるんだろう? ってことを想定して作ってた部分もあるから、そのホール・ツアーで得たことも含め、今度はライヴハウスの感覚を取り戻したいな。